関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

ウィーン工房1903-1932─モダニズムの装飾的精神- 【パナソニック電工 汐留ミュージアム】

前回ご紹介した旧新橋停車場 鉄道歴史展示室の展示を観た後、すぐ隣のパナソニック電工 汐留ミュージアムに行って、「ウィーン工房1903-1932─モダニズムの装飾的精神-」を観てきました。前期・後期に会期が分かれていて、私が観たのは前期でした。

PA291210.jpg

【展覧名】
 ウィーン工房1903-1932─モダニズムの装飾的精神-

【公式サイト】
 http://panasonic-denko.co.jp/corp/museum/exhibition/11/111008/index.html

【会場】パナソニック電工 汐留ミュージアム  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】JR/東京メトロ 新橋駅  都営大江戸線汐留駅

【会期】
 前期:2011年10月08日(土)~11月13日(日)
 後期:2011年11月15日(火)~12月20日(火)
   ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日14時半頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
結構多くのお客さんで賑わっていましたが、混んでいるわけでもなくゆっくりと観ることができました。

さて、今回の展示は20世紀初頭の「ウィーン工房」についての内容となっています。まず最初に簡単な略歴をご紹介すると、ウィーン工房は1903年にウィーン市内の小さなアパートの3部屋で、建築家のヨーゼフ・ホフマン、コロマン・モーザー、実業家のフリッツ・ヴェルンドルファーの3人が始めた企業です。建築、インテリア、家具、証明などあらゆる装飾を一貫したスタイルで統一する「総合芸術」を標榜し、ウィリアム・モリスの「アーツ・アンド・クラフツ運動」を継承していました。機能性、合理性を本領とするモダンデザインの先駆でありながら、装飾的で少し前の世紀末ウィーンで隆盛した退廃的かつ華麗な芸術とも対立することなく繋がる流れだったようです。
今回はその活動を初期から解散までの30年間を年代を追って展示する形式となっていましたので、詳しくは各章ごとにご紹介しようと思います。

 参考記事:
  ウィーン・ミュージアム所蔵 クリムト、シーレ ウィーン世紀末展 (日本橋タカシマヤ)
  ラファエル前派からウィリアム・モリスへ (目黒区美術館)
  ラファエル前派からウィリアム・モリスへ (横須賀美術館)
  ウィリアム・モリス ステンドグラス・テキスタイル・壁紙 デザイン展 (うらわ美術館)
  ウィリアム・ド・モーガン 艶と色彩 -19世紀 タイル・アートの巨匠-(パナソニック電工汐留ミュージアム)
  生活と芸術 アーツ&クラフツ展 ウイリアム・モリスから民芸まで


<第1章 「シンプルな装飾=原理が、空間を統べる=食べること」-アンチ・アール・ヌーヴォー的なるウィーン工房前期 1909-1914頃>
まずは初期のコーナーです。ウィーン工房は大きく2つの時代に分けることできるらしく、前期は1903年の設立からコロマン・モーザーが脱会し第一次世界大戦が始まるまでの約10年間で、単純で幾何学形態を強調した、シャープでモダンな空間構成と装飾の一体化が特徴だそうです。この頃はアール・ヌーヴォーが席巻していたので、この流れは先駆的な存在だったようで、ここにはその特徴を感じる作品が並んでいました。

15 コロマン・モーザー 「アームチェア」
入口にあった今回のポスターの作品です。市松模様の四角い椅子で、背もたれと肘掛けは格子状になっています。座るところは細い木?で編みこまれていました。意外と大きめでゆったりしていました。

少し進むとオスカー・ココシュカの絵葉書なども展示されています。太い輪郭でプリミティブな雰囲気もありつつ心和む絵です。

その先にはブローチやバックル、トレイ、鉢などの食器も展示されていて、八角形や楕円形、四角などシンプルですっきりしたものが多いです。家具用の布地もあり、半円や線で木々を表現してパターン化された模様となっていました。
他には、ウィーン工房の郵便物や、分離派の関連の書籍などもあります。

次の部屋には「サナトリウム・プルカースドルス」という建物の食堂の大きな写真が壁一面に展示されています。これは建物も家具もウィーン工房が手がけた最初の総合芸術らしく、モダンですっきりした印象です。この写真の中にも写っている椅子なども展示されていました。
この部屋の中央には金属製の網目で出来た花器やバスケットなどもあり、形がシンプルなので調理器具かと思いましたw 花形のようなものもあるので装飾性や遊びこころも感じるかな。他には食器棚やドレッサーもありました。


<第2章 「新興産業ブルジョワジーの夢=社会主義に支えられていたもの」-モーザー不在の工房、世代交代と過渡期>
ウィーン工房は労働環境がかなり良かったらしく、仕事場は常に衛生的で光にあふれ、定期的に1~2週間の休みが保証され、給与も高かったようです。これは、理想的なものづくりは理想的な環境が必要で、「十分に設備の整えられた現場が自己意識の強化と労働意欲の向上に役立つ」とされたためのようです。しかし、その為には前倒しで資金が必要であり、1906年には財政危機を迎えました。この時はモーザーの妻が支援して乗り越えましたが、モーザーは1907年頃から活動に距離を置いていったようです。その頃から工房では絵葉書の制作が開始され、ホフマンが教授を務めていたウィーン工業美術学校の卒業生たちをデザイナーとして高い評価を得たようです。1913年にはホフマンが「芸術家工房」を設立し、アトリエを持たない学生や卒業生に材料を提供しながら試作品を作らせ、良いものは買い上げて製品化していったとのことです。


この章の部屋の壁面にはモード・ウィーン1914113という木版に彩色した作品が並んでいました。ちょっと硬い気もしますが、優美な女性たちが着飾った華やかな雰囲気があります。また、他には紅茶セットや「婦人の生活」というシリーズもあり、様々な工房在籍デザイナーの作品が並んでいます。生き生きとして結構装飾的な作風となっていました。

29 コロマン・モーザー 「ベッド」
これは1904年の頃なので1章の範疇だと思いますが、2章の部屋の中央にありました。頭と足の部分が高い衝立のようになっていて、その裏表で幾何学的な寄木細工のような象嵌が施されています。鳩が飛んでいる様子が表されていて、マットにも三角をパターン化して並べたものがあるなど、先進的なデザインセンスが感じられました。隣にはサイドテーブルもあり、こちらも似た作りで豪華でした。

157 ダゴベルト・ペッヒェ 「テーブルセンターピース」
黄色の口と緑の胴を持ったセンターピースで、結構ポップな色合いで驚きました。胴には星のようなマークもあり可愛らしかったです。

156 ヨーゼフ・ホフマン 「花器」
花器で、ガラスの側面にシュロ?や着飾った女性たちが描かれています。カラフルな装いで細長く描かれた女性たちが優美です。近くにあった版画の中の女性たちに似ていました。

この辺の花器はカラフルで形も優美なものが多かったです。また、この部屋の壁やカーペットは当時のデザインを再現しているものらしく雰囲気が出ていました。


<第3章 「拒絶されたわけではなく新たに蘇る宿命にあった装飾の魔」-後期の工房、ウィーンにおけるアール・デコ的事情>
ウィーン工房は1910年にモード部門が開設され、ドレスや帽子、ジュエリーなどが新しく開店したモード専門店で販売されました。やがてそれはウィーン工房を支える重要な部署となり、経済危機などで経営が困難な時期でも店を増やし、ヨーロッパのモード界に君臨していったようです。テキスタイルも評判で、ポール・ポワレなども大量購入していたそうです。
モードの躍進によって初期の幾何学的でシンプルな装飾は次第に姿を消して、過剰に装飾的なデザインが台頭していき、1915年から参加したダゴベルト・ペッヒェのネオ・ロココ的なデザインによって、ロココ的装飾が特徴となっていったようです。ここにはそうした転換の様子がわかる作品が並んでいました。

175 ダゴベルト・ペッヒェ 「テーブルクロス」
レース編みのテーブルクロスで、草花の中に女性と犬?が立っているような模様で、非常に華やかで手が込んだ感じです。ここまで観てきたシンプルで先進的な感じと打って変わって、それ以前の時代の優美さを強調した作風になっているように思いました。

この辺には動植物をパターン化させたテキスタイル作品なども展示されていました。

307 フェリーチェ(=ウエノ)・リックス 「テキスタイル [クレムリン]」
「クレムリン」という名前が示すように、モスクのような形の建物をシンプルな幾何学で表したテキスタイルです。青、黄、オレンジで表現されパターン化されています。これは以前の幾何学的な作風の流れを感じさせました。

212 マックス・スニシェク 「ドレス、テキスタイル [バイエル]」
まるでカンディンスキーの抽象画をテキスタイルにしたような感じのドレスです。やや浴衣っぽい感じの形で、先進性を感じました。ドレスは結構幾何学的なデザインが残っているように見えました。

この辺には他に、ビーズバッグやブローチ、ネックレス、バッグなどもあります。たまにロココ風の作品もあるけど、パターン化された単純な模様の作品のほうが多い気がしました。書類ケースやクリムトの本、聖書なども展示されています。
また、壁にはウィーン工房の店の写真や展覧会を行った時の写真があります。クリムトと行った「ウィーンクンスト・シャウ」などに関するものなどもありました。

168 ダゴベルト・ペッヒェ 「テーブルセンター」
大きなレース編みで、楕円状の中に草花がデザインされていてどこか日本的な雰囲気があります。円の外にも草花や建物が織り込まれ、アール・ヌーヴォーを思わせました。


<第4章 「里帰りしたジャポニスム-ウィーン、日本、京都」-フェリーチェ(=上野)・リックスの場合>
最後は日本とウィーン工房の間を結ぶ、フェリーチェ(=上野)・リックスについてのコーナーです・
ウィーン工房のテキスタイルやガラス製品のデザイナーだったフェリーチェ・リックスは、ウィーン工業美術学校で学び、ヨーゼフ・ホフマンに師事しました。後に芸術家工房に入り、ウィーン工房最高の売れ行きを示すぼどになったようで、「製品化されたものだけで113点にも及ぶ」とまで言われたそうです。そして、その最盛期の1925年に、ホフマンの建築事務所で働いていた上野伊三郎と結婚し、翌年には来日して京都に住みました。京都市立芸術大学で教授になるなど教育に携わりながら制作を継続したそうで、ここには日本時代の作品も含めて彼女の作品がところ狭しと並んでいました。

1920年代の可愛らしいアヒルの形をした菓子入れや、コマのデザイン、キャンディーをプリントした服地のデザインなど細かくて装飾的なものが並んでいます。また、奥には京都時代の作品もあり、ほっそりした蔦がクルッと丸まったそら豆の壁紙が色違いで5点ならんでいます。明るく軽やかで、日本人の感性によく合うように思います。
「夏の平原」というシリーズは無数に線が引かれ、風が渦巻いているような印象があり好みでした。

その近くには七宝のコーナーもあり、ポップで可愛らしい模様のついた七宝が並んでいました。部屋の中右奥にはテキスタイルデザインがあり、パターン化され幾何学的なももありつつ日本的な雰囲気も感じました。


ということで、情報量が多く今後の参考になりそうな展示でした。30年程度の期間に様々に変わっていく作風からは時代の空気なども感じられました。デザイン好きな人には特に面白いかと思います。
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評価




コメント
No title
私もウィーン工房展見てきました!
第2章では壁やカーペットも展示の一つになってていいなあ・・・と思っていたら、この展示のためにわざわざ発注したんですね。壁紙はともかく、カーペットを特注したなんてちょっとすごいかも。。。
2011/11/26(土) 01:10 | URL | Little Blue #-[ 編集]
Re: No title
>Little Blueさん
コメント頂きありがとうございます^^
この展示は会場も当時のデザインのものを使っていて凝ってますよね。
たしかにカーペットは大変そうです。
それに加えて先進デザインから逆流していく流れも観られたり、中々貴重な機会でした。
2011/11/26(土) 03:21 | URL | 21世紀のxxx者 #-[ 編集]
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●日本の観光黎明期~山へ!海へ!鉄道で~(旧新橋停車場 鉄道歴史展示室)

山とか海とか(いわゆるリゾート地)ってあんまり興味ないので、見に行くつもりはなかったのですが、お隣の汐留ミュージアムの「ウィーン工房1903-1932」を見たついでに寄ってみました(最終日だったので...
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