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殿様も犬も旅した 広重・東海道五拾三次-保永堂版・隷書版を中心に- 【サントリー美術館】

先週、会社の帰りに六本木のサントリー美術館で、「殿様も犬も旅した 広重・東海道五拾三次-保永堂版・隷書版を中心に-」を観てきました。ここ数日、六本木の展覧会をご紹介していますので、こちらも合わせてご紹介しておこうと思います。

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【展覧名】
 殿様も犬も旅した 広重・東海道五拾三次-保永堂版・隷書版を中心に-

【公式サイト】
 http://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/11vol06/index.html

【会場】サントリー美術館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】六本木駅/乃木坂駅


【会期】2011年12月17日(土)~2012年1月15日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(平日18時頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
3連休前の週末でしたが、平日ということもあり空いていてゆっくりと観ることができました。

さて、今回の展示は非常に有名な歌川広重の東海道五十三次をテーマにした内容となっています。
東海道というのは江戸時代の江戸日本橋と京都を結ぶ街道で、元々は幕府の物資や役人の為の道でしたが、江戸時代に大名に課せられた参勤交代の制度によって街道と宿場は発展し、江戸中期以降は庶民にも利用されるようになり賑わいました。東海道は伊勢参りのルートでもあったため、老若男女が伊勢詣の為に使ったそうで、中には犬の伊勢詣もあったそうです。
そんな東海道を浮世絵にした歌川広重の東海道五十三次は、1833年に版元の保永堂[ほえいどう](竹内孫八)と僊鶴堂 [せんかくどう](鶴屋喜右衛門)から共同出版され、後に保永堂単独の出版となりました。そして広重の代表作と言える大ヒット作となり、広重は生涯に20種類以上の東海道ものを制作したようです。1840年に丸屋清次郎の寿鶴堂[じゅかくどう]から出版された「東海道」もその中の1つで、画中の題が隷書体(れいしょたい)で書かれていることから隷書版東海道と呼ばれるそうです。この展示では保永堂版と隷書版を比較するなど、様々な表現の工夫や変化も見られるようになっていました。詳しくは気に入った作品を通してご紹介しようと思います。なお、過去にも何度か東海道五十三次シリーズはご紹介していますので、今回はなるべく以前ご紹介しなかった作品を挙げていこうと思います。

 参考記事:
  浮世絵入門 -広重《東海道五十三次》一挙公開- (山種美術館)
  広重と北斎の東海道五十三次と浮世絵名品展 (うらわ美術館)
  

1 歌川広重 「保永堂版 東海道五拾三次之内 日本橋 朝之景」 ★こちらで観られます
2 歌川広重 「保永堂版 東海道五拾三次之内 日本橋 行烈振出 (変わり図)」
まずはスタートの日本橋の図は2枚並んでいました。朝之景のほうは奥から日本橋を渡ってくる大名行列の先頭と、その手前に天秤を担ぐ魚売り達が描かれ、右には犬の姿もあります。それに対して行烈振出は橋の前の人々がだいぶ増えて、日本橋の賑わいを感じさせます。これは行烈振出のほうが後の版らしく、だいぶごちゃっとした雰囲気になっていました。

3 歌川広重 「隷書版 東海道一 五十三次 日本橋」
これも日本橋ですが東海道五十三次シリーズではなく隷書版東海道の作品で、上記2点と並んで展示されていました。左右に広がる日本橋を俯瞰するような感じで、橋の向こうには富士山を背景に沢山の蔵が規則的に並んでいます。蔵には商標を記しているのですが、よく観ると、右から順に、「新坂五十三次芝丸清板」と読めるそうです(芝と板は読めませんでしたがw) 広重の作品にもこうした遊びが随所にあって面白いです。

この辺にはこうした変わり図と隷書版を合わせた3枚セットの作品が並んでいました。変わり図は色合いや構図が若干変わっていて、一種の間違い探しみたいなw やはり変わる前の方が好みのものが多いかな。

15 歌川広重 「保永堂版 東海道五拾三次之内 戸塚 元甼別道」
16 歌川広重 「保永堂版 東海道五拾三次之内 戸塚 元町別道 (変わり図)」
平均的な旅人が1泊目に宿を取るのが戸塚だったそうで、ここでも2枚が展示されていました。元甼別道の方では辺りが暗くなり、右には橋を渡ってくる旅人、左では米屋の前で馬から飛び降りている男性などが描かれています。それに対して変わり図では旅人は馬に乗る姿に変わっていて、米屋の戸が窓となっていて背景が見えなくなっているなどの変化があります。気のせいか色も明るく昼間のような雰囲気でした。 解説によると、こうした変更は版元の意向で行われていたようです。

19 歌川広重 「隷書版 東海道七 五十三次 藤澤」
夕暮れから夜頃の藤沢の宿場町の様子を描いた作品です。たくさんの人が道を行き交い、提灯を持った女性は人々に声をかけたり、旅人の客引きをしているようです。旅先の夜の情景を思い出すような、楽しくてどこか懐かしさも感じるような雰囲気でした。

この隣にあった五十三次の平塚も大好きな作品です。少し進むと富士山が描かれた「武蔵野図屏風」や尾形乾山と尾形光琳の合作「銹絵雪景富士図角皿」などがあり、箱根付近の富士の雰囲気を盛り上げていました。
 参考記事:夢に挑む コレクションの軌跡 (サントリー美術館)

27 歌川広重 「保永堂版 東海道五拾三次之内 箱根 湖水圖」
切り立った山と、その急坂を行く大名行列、左半分には芦ノ湖の美しい風景と富士山が描かれた作品です。天下の険の名に相応しく、そびえる山が強調されて当時の難所であったことが伺えます。色とりどりに描かれているのもリズミカルで観ていて楽しい作品です。
 参考記事:芦ノ湖~大涌谷の写真

31 歌川広重 「保永堂版 東海道五拾三次之内 沼津 黄昏圖」
逆くの字に曲がる道を行く3人の旅人を描いた作品で、周りは夜で、中央辺りに大きな丸い月が浮かんでいます。旅人のうちの1人は背中に大きな天狗の面を背負っていて、この人は金毘羅参りに行くそうです。(奉納のための天狗の面を背負う約束事があるそうで、後の方の展示でも同様に天狗の面を背負っている作品がありました。) 月夜のせいか静かな雰囲気でした。

この辺にも屏風があったかな。

35 歌川広重 「保永堂版 東海道五拾三次之内 吉原 左冨士」」 ★こちらで観られます
今回のポスターにもなっている作品で、江戸から京都に向かう際、いつも右側に見えているはずの富士山が、蛇行する道によって左側に見えるので左富士と呼ばれる地域を描いています。松並木を行く馬の背に3人の子供たちが乗っているのですが、寝ている子もいるような…。また、道は結構細くて馬1頭で道を塞いでいますw 手前から奥に続く並木は遠近感と長い距離を感じさせました。この構図が好みです。

この近くには大好きな「東海道五拾三次之内 蒲原 夜之雪」もありました。

48 歌川広重 「保永堂版 東海道五拾三次之内 丸子 名物茶店 (初摺)」 ★こちらで観られます
49 歌川広重 「保永堂版 東海道五拾三次之内 鞠子 名物茶店 (後摺)」
こちらは初摺と後摺をセットで展示していました。どちらもとろろで有名な丸子(まりこ)の茶屋のような所で2人の男がとろろ汁を食べている様子と、女性が器を出しているところが描かれ、茶屋の先にはもう一人の男が道を歩いています。解説によると、この2人は東海道中膝栗毛の弥次さん喜多さんを思わせる(物語では2人は食べられなかったらしい)そうです。 2枚は一見両方同じように見えますが、タイトルが丸子と鞠子で違ったり、女中と食べている男の着物の色が後摺では薄くなっていたり、道の男の服の模様が無くなっているなどの変更点がありました。絵師は初摺しかチェックしなかったのでこうした変更は日常茶飯事だったそうで、初摺のほうが気合が入っているように感じました。

この先には最大の難所である大井川の近くの宿場が続きます。

59 歌川広重 「保永堂版 東海道五拾三次之内 日坂 佐夜ノ中山」
Jの字を書くような急坂を描いた作品です。構図も面白いですが、中央辺りの道の中ほどに置かれた夜啼石(よなきいし)という大きな石を見物している人々が目を惹きます。解説によるとこの石には伝説があり、この石の傍らで山賊に殺された妊婦がこの石に乗り移って、夜な夜な泣いたそうです。赤ん坊は助かり、後に母の仇を討つというストーリーですが、こちらや「東海道廿六 五十三次 日阪」ではそれほど皆恐れずに見物しているように見えました。

この次は大好きな「東海道五拾三次之内 掛川 秋葉山遠望」もありました。

64 歌川広重 「隷書版 東海道廿八 五十三次 袋井」
田んぼの間を走るじぐざぐの道と、右から左に上げられている3つの大凧を描いた作品です。凧の配置には幾何学的なリズムがあって心地よく、背景のジグザグの道も含めて面白い作品でした。

上階は荒井までです。続いて下の階に進むと、階段の下には日本橋の絵を立体化したようなパネルもありました。
下の階の最初は「天童広重と円山応挙」というコーナーとなっています。これは、1848年~1854年頃に山形の天童藩からの依頼で描いた広重の肉筆画で、それが天童広重と呼ばれているようです。当時の天童藩は財政難で十年年賦という地方債のようなもの?を出していて、その満了期に近づくと広重の絵を渡して慰労と新たな10年の上納の契約をさせていたそうです。こうして描かれた広重の作品は円山応挙や松村景之ら四条派の描写を学んだ形跡が観られるとのことで、応挙の作品と共に展示されていました。

歌川広重 「王子音無川・東都王子不動之瀧・王子滝之川」
3枚セットの肉筆の掛け軸で、中央に白い滝、右に大きな川とその川岸の家々、左は紅葉に染まる川岸を写実的に描いています。遠近感とかは応挙に似てると言われれば似てるかな。版画の浮世絵とはまた違った情緒ある主題で面白かったです。
 参考記事:円山応挙-空間の創造 (三井記念美術館)

ここから再び五十三次です。

81 歌川広重 「保永堂版 東海道五拾三次之内 赤阪 旅舎招婦ノ圖」
旅館の中庭から部屋を観たような構図の作品です。廊下を手ぬぐいを下げて歩く客や、支度をする飯盛女や遊女、キセルを吸ってくつろぐ客など全体的に楽しげな雰囲気です。庭には石灯籠とソテツの木があるなど、中々良さそうな宿で旅情がありました。

この1つ前には客引き女(留女)がしつこいので有名だった「御油」などもあります。

85 歌川広重 「保永堂版 東海道五拾三次之内 岡崎 矢矧之橋 (初摺)」
86 歌川広重 「保永堂版 東海道五拾三次之内 岡崎 矢矧之橋 (後摺)」
これも初摺と後摺が並んで展示されていました。左下から右にかけて橋が描かれ、橋の上には大名行列が並び、背景には岡崎城と山が見えます。2つを比べると、奥の山が左に伸びていたり、後摺ではグラデーションが簡略化されているなどの違いがありました。比べてみると色々と違いがありますね。(結構、工程を簡単にしているように思えます)

92 歌川広重 「保永堂版 東海道五拾三次之内 宮 熱田神事」
右に大きな鳥居の左半分だけが描かれ、それ以外の画面には沢山の人々が綱を引っ張って走る様子を描いています。先頭付近には馬がいて、これは馬を奉納する神事だそうです。全体的に勢いがあり、鳥居の配置が大胆に思いました。

この辺にある「四日市 三重川」や「庄野 白雨」は何度観ても大好きです。

97 歌川広重 「隷書版 東海道四十四 五十三次 四日市」 ★こちらで観られます
大きな鳥居のある宿場町を描いた作品で、沢山の旅人が行き交っている中、首に何かを巻きつけた犬の姿があります。解説によるとこの犬は主人のために伊勢参りにいく途中らしく、旅人に名物のまんじゅうを貰っていました。こういう感じで人々に恵んで貰いながら犬も旅したそうですが、賢すぎて驚きます。 犬に目的地が分かるのか、川や関所はどうやって通過したのかなど不思議です。 今回の展覧会のタイトルも本当に描かてているんですねw

111 歌川広重 「隷書版 東海道五十一 五十三次 水口」
左右の山に囲まれたじぐざぐの坂道を行く旅人が描かれた作品で、坂の上には牛を連れた人も描かれています。その先には入道雲と青空が広がり、緑や青、雲の白など爽やかな印象を受けます。また、ここは美松という枝が数十に分かれる珍しい松が名物のようで、辺りにはそれっぽい松も生えていました。 隷書版も結構いい作品が多くて面白いです。

この辺になるとゴールの京都も近くなっていて、「近江名所図屏風」など近江や京都の街を俯瞰するような風景の屏風が並び雰囲気を盛り上げます。これはこれで圧巻です。それ以外も蒔絵や櫛など近江八景を題材にした作品もありました。

119 歌川広重 「隷書版 東海道五十五 五十三次 大尾 京」
終着点の三条大橋の上を沢山の人々が行き交う様子を描いた作品です。三条大橋から観た風景となっていて、大原女や茶筅売など地元の商売人などの姿があり、背景には八坂の塔、清水寺などが描かれていました。非常に活気があり五十三次シリーズよりもこっちの方が好みかもw

120 歌川広重 「保永堂版 真景 東海道五十三驛 續画」
これは保永堂版東海道五十三次の55枚をセット販売する際に使われた袋で、道中の登場人物を彷彿とする35人の人々がぎっしり描かれているのが楽しげです。「えぶくろ」と呼ばれていたそうですが、今は切り取られていて原型は不明とのことでした。現存数も少なく貴重な品のようです。


ということで、毎年のように観ている東海道五十三次ですが、隷書版や変わり図との比較が観られたのでいつも以上に楽しめることができました。保存状態も良いので、このシリーズをまだ観たことがない方はこの機に一気に観ることをお勧めします。何度観ても浮世絵ってこんなに面白いんだ!という感動と新しい発見のある作品です。

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