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生誕100年 ジャクソン・ポロック展 (感想前編)【東京国立近代美術館】

この前の日曜日に竹橋の東京国立近代美術館へ行って「生誕100年 ジャクソン・ポロック展」を観てきました。非常に参考になる展示で、メモも沢山とってきましたので前編・後編に分けてご紹介しようと思います。

P2263191.jpg

【展覧名】
 生誕100年 ジャクソン・ポロック展

【公式サイト】
 http://pollock100.com/
 http://www.momat.go.jp/Honkan/jackson_pollock_2012/index.html

【会場】東京国立近代美術館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】東京メトロ東西線 竹橋駅


【会期】2012年2月10日(金)~5月6日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日14時半頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
結構混んでいてあちこちで人だかりが出来るくらいでした。大きめの作品は特に気になりませんが、狭い場所などもあるので混雑感がありました。

さて、今回の展示はジャクソン・ポロックの個展で、ニューヨーク近代美術館、イランのテヘラン現代美術館の主要な作品に加え、日本で存在の分かっている作品すべてなどおよそ70点が集まっていて、日本でこれだけの規模の展示が開かれるのは初めてだそうです。その上、今まで門外不出となっていたイランが所有する「インディアンレッドの地の壁画」も出品されているという非常に貴重な機会となっています。展覧会自体は初期から晩年まで年代を追っていく形となっていましたので、詳しくは気に入った作品を通してご紹介しようと思います。なお、似たような名前の作品や無題がありますので、作品番号も記載しておきます。


<第1章 1930-1941年:初期 -自己を探し求めて->
まずは初期の作品のコーナーです。ジャクソン・ポロックは1912年にアメリカ西部のワイオミング州コディに生まれました。カルフォルニアやアリゾナなどを転々とした後、1928年にロサンゼルスに移り、手工芸高校に入学します。そこで彫刻やドローイングの授業を受け学び、その後1930年(18歳の時)の秋にはニューヨークに出て本格的に絵画の修行に入ります。アート・ステューデンツ・リーグという美術専門学校で、アメリカの地方の情景を描く地方主義の主導的画家であるトーマス・ハート・ベントンに師事した他、アルバート・ピンカム・ライダーなどにも傾倒していたようです。1930年代始めは絵画を学ぶ傍らで彫刻も学んでいて、彫刻こそが自分の表現媒体であると言っていたほどだったようですが、彫刻をマスターすることはなくいつしか離れ画家の道を選ぶます。
その後、ポロックはオロスコ、シケイロス、リベラといったメキシコ壁画の作家から影響を受け、シケイロスの助手にもなったようです。そこで後に多用する「ポーリング」という流しこみの技法に通じる技法や、素材に触れました。また、他にもネイティブアメリカンやピカソにも影響を受けたようです。この章では、そうしたポロックの背景を感じさせる作品などが並んでいました。

1 ジャクソン・ポロック 「無題 自画像」
暗い茶色の背景に、こちらを見る青少年のような姿で描かれた自画像です。まだ具象的で、おでこに光が当たっていて目はうつろな感じに見えるかな。解説によると、この作品は内面を描こうとしたものだそうです。自画像では若く見えますが、この頃から既に酒に溺れていたようです。

5 ジャクソン・ポロック 「綿を摘む人たち」
畑で屈んで綿を摘んでいる5人の農夫たちを描いた作品です。解説によると、地方の農作業を主題としているのはトーマス・ハート・ベントンの影響が強いためのようです。全体的に暗めで落ち着いた色調に見えますが、光がうねりのように見えて、ちょっと不穏な感じすら受けました。

6 ジャクソン・ポロック 「西へ」
月明かりの下、岩のようなものの合間に馬車を連れた人が描かれています。結構単純化されていて、地面や空は渦巻くような感じすら受けます。全体的に幻想的かつ陰鬱な雰囲気があったのですが、これはベントンやライダーからの影響のようでした。

この辺にはエル・グレコの作品を元にしたスケッチなどもありました。ヨーロッパの巨匠たちの作品の構図などを研究していたようです。また、少し進むと顔の形の小さな彫刻作品もありました。

7 ジャクソン・ポロック 「四つの図柄のあるパネル」
横に4つ並んだ小さなパネルのような作品です。これは今は復元されていますが、一時期何者かに4つに分割されてしまっていたそうです。それぞれに抽象的な何かが描かれていて、何を描いているのか見分けは難しいですが、炎のような感じのものや実験器具のようなものが描かれているように観えました。色が強めのせいかちょっと禍々しい雰囲気がするようなw

13 ジャクソン・ポロック 「コンポジション」
中央上部に右を向く女性の顔が描かれ、その後ろには獣らしきものの姿があります。女性は非常に派手な原色の服を着ているのですが、それが抽象的で顔以外は服なのか背景なのか分からないくらいです。幾何学的な文様や絵文字のようなものあり、これはネイティブアメリカンの芸術を連想させるようでした。

この辺にはメキシコのオロスコに影響を受けた作品などもありました。強烈な色彩の作品が並んでいます。

14 ジャクソン・ポロック 「無題 多角形のある頭部」
白っぽい人物が腕を挙げて仰け反っているような作品で、二の腕の辺りにもう1つの顔のようなものがあります。そしてそれらの上に☆のようなものが大きく描かれています。若干、キュビスム風に思えたのですが、解説によるとこれはピカソとの共通点があると考えられているそうです。ポロックはピカソを乗り越えるべき壁として考えていたそうで、ある時、「あいつが全部やってしまった!」と嘆いたこともあったそうです。とは言え、ピカソのキュビスムをそのまま使っているわけではなく、独特の雰囲気もありました。ちょっと不気味さを感じるというか…w

15 ジャクソン・ポロック 「誕生」 ★こちらで観られます
太い黒の輪郭で円形の仮面が縦に並んでいるような作品です。全体的に厚塗りされていてざらついた質感に見えます。近代っぽさとプリミティブなものの両面があるように思えました。 解説によるとこれもピカソやネイティブアメリカンからの影響があるらしく、初期の終わりの作品と考えられているそうです。また、この作品は「アメリカとフランスの絵画」という展覧会にピカソやマティスらと共に出品されたそうです。同じ展覧会に出品した女性画家のリー・クラズナーはポロックとはどんな人物か?と訪ねたのがきっかけで、後にポロックと結婚に至ります。

この頃、ポロックは重度のアルコール中毒だったらしく、精神分析医の治療を受けるようになったそうです。治療に際してドローイングを分析の材料として用いたそうで、アイディア帳のようなものが3点ほど展示されていました。脈絡のない様々なものが描かれていて、一種の狂気を感じさせます。

また、この近くにはポロックの唯一のモザイク作品や、色鉛筆の側面に描かれた作品なども展示されていました。


<第2章 1942-1946年:形成期 -モダンアートへの参入->
1942年になると、ポロックはベントン、ライダー、メキシコ壁画からの影響を脱して、ジョアン・ミロやシュルレアリスム、マティスなどヨーロッパのモダンアートを積極的に吸収していったそうです。初の個展を開催するなど新しい仕事を発表していき、美術評論家のクレメント・グリーンバーグの評価も後押しして若い有望な前衛画家として台頭していきました。
そして1942年に「ポーリング」という技法を使い出します。これは流動性の高い塗料を画面に流しこむもので、ネイティブアメリカンの砂絵、シケイロスの実験工房の技法、シュルレアリスムのオートマティスムなどに源泉を持っているようです。ポロックはこの技法を最初は控えめに使っていましたが、1943年には大胆に使うようになりました。また、画面を同じようなパターンで均質に覆っていくオールオーヴァーという技法も編み出し、ポーリングと融合して革新をもたらしていきます。
私生活においては1945年にリー・クラズナーと結婚し、ニューヨーク州のロングアイランドに移住しました。1946年には自宅の納屋をアトリエに改造したそうで、それによって大きな作品を作ることのできる空間が手に入ったようです。
ここにはそうした全盛期直前の形成期の作品が並んでいました。

21 ジャクソン・ポロック 「ポーリングのある構成Ⅱ」
緑色のうねりの上に、黒、オレンジ、白など様々な塗料が踊るように飛び散っている作品です。偶然なのか計算なのかはわかりませんが、全体的に躍動的な雰囲気がありました。これはポーリングの技法を発明した次の年の作品のようですが、既に自由闊達な作風に観えました。

22 ジャクソン・ポロック 「ブルー - 白鯨」
空のような鮮やかな青を背景に。牛や不定形の謎のものが描かれています。離れてみると熱帯魚でも描いているのか?と思いましたが、無意識で描いたものらしいので正体不明です。解説によると、この作品は第二次世界大戦によってアメリカに亡命してきたシュルレアリスムの画家や、回顧展が行われたミロの影響を受けているそうで、均一な青の背景はたしかにミロっぽさを感じました。なお、タイトルはポロック自身がつけたわけでないそうですが、ポロックが好きだったハーマン・メルヴィルの小説「白鯨」にちなんでいるそうです。
 参考記事:
  シュルレアリスム展 感想前編(国立新美術館)
  シュルレアリスム展 感想後編(国立新美術館)
  シュルレアリスム展 2回目 (国立新美術館)

このあたりにはポーリングではない作品もあり、一時的にポーリングへの興味を失っていた頃もあるようでした。他にはオートマティスム風の作品もありました。

37 ジャクソン・ポロック 「無題」
全体に黄色で下地をつけその上に新聞紙を貼り、グレー、茶色、オレンジなどで色をつけて最後に黒のポーリングで複雑に線を描いた作品です。この作品から「オールオーヴァーのポード絵画」と呼ばれる作品に転機したようで、画面を均質にしたオールオーヴァーと垂らし込むポーリングを使い、シュルレアリスムの自動書記(オートマティスム)を行なっているようでした。様々な技法の集大成的な作風が出来上がってきた感じがします。

余談ですが、次の章あたりを鑑賞しているときにお好み焼きみたい…と言っている子供がいて面白かったのですが、お好み焼きで言えば刷毛で塗ったソースがオールオーヴァーで、その上にかけるマヨネーズがポーリングって感じですw

2章の終わりあたりには9分と6分映像があり、ジャクソン・ポロックの制作風景が流されていました。外や床の上に大きな絵を置いて、そのまわりで大きな刷毛と塗料の缶を持って凄い勢いで垂らしていました。筆より棒を使ったり、小石やガラス片も使うと言っていました。


ということで、まだ半分程度ですが文が長くなってきたので今日はこの辺までにしようと思います。前半は後の作品に繋がる土台のようなもので、後の方を観てから見直すと、確かにルーツがあったように思えるのが面白かったです。ポロックの絵はそれだけ観ると難解ですが、こうして流れを追うと分かってくるのも初心者には嬉しい点でした。
後半は代表的な作風の全盛期の作品が並ぶコーナーがありましたので、次回はそれについてご紹介しようと思います。


  →後編はこちら



 参照記事:★この記事を参照している記事
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