関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

フィンランド・デザイン展 【府中市美術館】

1週間ほど前の日曜日に府中市美術館でフィンランド・デザイン展を観てきました。

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【展覧名】
 フィンランド独立100周年記念 フィンランド・デザイン展

【公式サイト】
 http://finnish-design2017.exhn.jp/
 https://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/kikakuten/kikakuitiran/finland.html

【会場】府中市美術館
【最寄】府中駅

【会期】2017年9月9日(土)~10月22日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
たまたま入館無料の日に行ってしまい、非常に混んでいて観るのも一苦労といった感じでした。子供がダッシュしてたりして、いつもと雰囲気が違う中で鑑賞してきましたw

さて、この展示は日本でも人気のフィンランドのデザインに関する展示で、フィンランドの独立100周年を記念したものとなります。展示では独立前からフィンランドデザインの歴史をなぞる感じで構成されていて、非常に独創的な雑貨や家具などが並んでいました。この展示には作品リストが無かったので、簡単にメモしてきた内容を元に振り返ってみようと思います。


<1.フィンランド独立以前の装飾芸術>
まず最初は1900年頃の独立前のフィンランドデザインについてです。ここには陶器や木製家具、ガラス器などが並び、やや素朴なものからアール・ヌーヴォーやアールデコ的なものまでありました。フィンランドは1900年にパリ万国博覧会のフィンランド館への出品が独立の足がかりになったそうで、その時もモダンで一際目を引くデザインを披露していたそうです。この章では当時の様子を記録した映像なども紹介されていました。その後、ロシア革命の混乱に乗じて1917年にフィンランドは独立し、デザインにおいても独特の進化を遂げていきます。


<2.フィンランド・デザインの礎>
ここではフィンランドを代表する企業とデザイナーを紹介していました。食器のアラビア、テーブルウェアやガラスのイッタラ、インテリアのアルテックなどの品が並び、特にアラビアのデザイナー カイ・フランク、マリメッコのデザイナー マイヤ・イソラ、アルテックのデザイナー アルヴァ・アアルトの3人を取り上げています。
まずカイ・フランクはシンプルな形の食器やガラス器が並んでいて、色合いの可愛らしさもあれば 形のモダンさもある 飽きのこないデザインです。
次にマイヤ・イソラはド派手なテキスタイルが壁一面に展示されていて目を引きます。マリメッコの象徴とも言えるウニッコ(ケシの花)柄の鮮やかさは多くの人が心惹かれると思います。服も何着かあり、同様に明朗快活なデザインとなっていました。
アルヴァ・アアルトは北欧モダンデザインの父とも言われるほどの人物で、成型合板や曲げ木の技術を開発したそうで、曲げ木のレリーフや椅子などが並んでいます。有機的で滑らかなフォルムの作品が多く、合板以外にもガラスや金属の作品(ボウルや花瓶など)もありました。いずれも理知的な印象を受けます。さらにアルヴァ・アアルトは建築も手がけていたようで、建築の設計図などもありました。


<3.フィンランド・デザインの完成>
続いては独立後の成熟期についてのコーナーです。ここにはフィンランドモダンデザインの巨匠と呼ばれるタピオ・ヴィルカラ、ティモ・サルパネヴァ、イルマリ・タピオヴァーラなどの作品が並びます。
まずタピオ・ヴィルカラは氷を思わせるやや表面がボコボコしたガラス器が並びます。これはまさに氷柱からインスピレーションを得ているそうで、涼しげな印象を受けます。
次にティモ・サルパネヴァは丸みのあるガラス器が並び、優美な印象を受けます。こちらも素材感が面白い作品が多かったように思います。
イルマリ・タピオヴァーラは前述のアルヴァ・アアルトの弟子で、合板を使った椅子が展示されていました。合板ならではの形の自由さもあり、どこか温かみを感じる曲線が好みでした。


<4.フィンランド・デザインの異才たち>
続いては主流とは異なる独自のデザインを切り開いた4人の異才が紹介されていました。私が最も気に入ったのはこの章です。
まずフィンランドと聞いたら真っ先に思いつく人も多い「ムーミン」を生み出したトーベ・ヤンソンの作品が並びます。ムーミンの各国語版やグッズ、飛び出す絵本のようなものもありますが、それ以外にもグラフィックデザインやテキスタイルも手がけていたようです。いずれも可愛らしいデザインで幅広い人に愛されるのも納得のデザインです。ちなみに作者本人はスナフキンみたいな人柄なのか、無人島に近いところで制作していたというエピソードも紹介されていました。
そしてこの展示で一番好きになったのがエーリク・ブルーンのグラフィックデザインで、魚や果実といった自然をモチーフにしたポップな印象を受けるポスターが並んでいました。特にオレンジジュース「JEFFA(ヤッファパームツリー ヤッファジュースのポスター)」のデザインは秀逸で、オレンジジュースとオレンジの切り身がヤシの木の形となっているのが面白かったです。
続いてマリメッコのデザイナーであるヴォッコ・エスコリン・ヌルメスニエミのテキスタイルがあり、手書きのような温かみとモダンさが融合したゆったりした服(円形みたいな)が展示されていました。これは中々先進的です。
そしてもう1人はインテリアのエーロ・アールニオで、ポップな色合いの犬の形の椅子や、球体状の椅子などが並びます。この辺は有名なのでご存知の方も多いかな? 美術館の入口にもあったので、記事の最後に写真を載せておきます。


<5.フィンランド・デザインの飛躍>
こちらはWW2後から現在まで飛躍しつづけるデザインについてで、主に4人のデザイナーが紹介されていました。まずオイバ・トイッカは鳥の形のガラス器が多く並んでいて、これは以前に観たのをよく覚えていました。デフォルメされていて可愛らしさと柔らかみを感じました。
 参考記事:
  森と湖の国 フィンランド・デザイン 感想前編(サントリー美術館)
  森と湖の国 フィンランド・デザイン 感想後編(サントリー美術館)
  
続いて日本人でマリメッコのテキスタイルデザイナーの石本藤雄で、花をモチーフにした陶板が並びます。これもマリメッコらしい華やかさと優しい雰囲気があり目を引きました。勿論、テキスタイルも展示されていて独特の鮮やかな色彩感覚が流石でした。
続いてヘイッキ・オルボラはこの展示の中でも最も身近に感じたイッタラのキャンドルホルダーが並んでいました。厚みのあるガラス製で、色んなお店で観た覚えがあります。(というか家にもありますw) 定番になっているのは優れたデザインであることの証明みたいなものかな。
そしてもう1人、陶芸家でデザイナーのトーベ・スロッテはムーミンの書籍やマグカップ、スケッチなどが並んでいました。やはりフィンランドでは今でもムーミンが愛されているのがよく分かります。


<6.フィンランド・デザインのいま>
最後は現在のフィンランドデザインについてで、2人のデザイナーが紹介されていました。
まずハッリ・コスキネンはランタンやポット、ガラス器、椅子、テキスタイルなど様々な品が並び、洗練されたフィンランドデザインの精神を確実に引き継ぎならがさらに進化している感じを受けました。
もう1人はヘイニ・リータフフタで、花柄の陶器や人の形のキャンドルホルダー、陶板のリリーフなどが並んでいます。こちらは温かみのある雰囲気があり、心が安らぐ楽しさがありました。


ということで、満足度の高い内容となっていました。特にエーリク・ブルーンのポスターが気に入ったので、ポストカードを10枚くらい買ってきました。勿論、イッタラやマリメッコといったデザインが好きな方にもオススメです。もう会期末となっていますので、気になる方はすぐにでもどうぞ。 なお、この展示は10/28~12/24に宮城県美術館へと巡回するようです。

おまけ:
美術館の入り口にあったフィンランドデザインの数々。

エーロ・アールニオ「パピー」
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名前の通り犬の置物のように見えて椅子とは思えないw

エーロ・アールニオ「ボールチェア」
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この近未来感がたまらない。中に入ると防音効果があるのか、後方の音が少し聞こえなくなりますw

ムーミンとイルマリ・タピオヴァーラの椅子
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近くのミュージアムショップではムーミングッズも売っていました。今回のミュージアムショップの品揃えは熱いです。



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評価




怖い絵展 【上野の森美術館】

今日、上野の森美術館で「怖い絵展」を観てきました。非常に沢山の人で賑わっていましたので、気になる混み具合を含めて早速ご紹介しておこうと思います。

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【展覧名】
 怖い絵展 

【公式サイト】
 http://www.kowaie.com/sakuhin.html
 http://www.ueno-mori.org/exhibitions/article.cgi?id=226

【会場】上野の森美術館
【最寄】上野駅

【会期】2017年10月7日 (土) ~ 12月17日 (日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_①_2_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
非常に混んでいて、入場待ちの列が出来ていました。雨の日の日曜日12時過ぎで50分待ちの表示となっていましたが実際は30分もかからなかったかな。実は先週も足を運んだのですがその時も50分待ちだったので、土日の午後はこれくらいが標準的なのかも。14時半に観終わった頃には100分待ちになっていました。
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久々に3桁の数字を見ましたw

この辺りで30~40分待ちくらいかな。
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これが帰り際に見た100分待ちの光景。
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えらいとこまで列が伸びてました…。

勿論、中も大混雑で一番前で観ようと思ったらだいぶ列に並ぶと思いますが、私は後ろの方から観ていました。また、今回は各作品に解説があって、絵だけでなくそれを読むのに大勢集まってる感じかな。私はタイトルで分かるものが多かったので大半は読まないでサクサク進んできました。なので、じっくり観たい人は私以上に時間がかかって鑑賞時間も2時間くらいになるかもしれません。


さて、肝心の内容についてですが、この展示は2007年に刊行された中野京子 氏による『怖い絵』の10周年を記念するもので、本の中で紹介されている絵の一部が出品されています。私は未読でしたが楽しめましたので、特に読まなくても展覧会でだいたい分かると思いますが深く知りたいかたは本を読んだほうが良いかもしれません。

参考リンク:「怖い絵」
   

中は6章に分かれて展示されていましたので、各章ごとに簡単にご紹介しておこうと思います。なお、この展示は写真を撮ることはできませんが、会場の外にプリントされたものを撮ったので、それを使って一部をご紹介しようと思います。


<第1章 神話と聖書>
まずは神話と聖書を主題とした作品のコーナーです。神話も聖書も残虐なシーンが結構あるのでそれを描くと当然怖いのですが、そこに画家の想像力が働くと一層怖くなるのがよく分かります。一方、一見すると大して怖くなくてもストーリーを知ると怖いという作品もありました。中野京子 氏は絵には感覚で観るだけでは分からないことが込められているので、背景を知ることが絵に対するリスペクトだという考えを持っているようです。私もこの意見に大いに賛成で、特にこの章はそれが顕著だと思います。

こちらはジョン・ウィリアム・ウォーターハウスの「オデュッセウスに杯を差し出すキルケー」 
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この女性は魔女で、ギリシア神話の英雄オデュッセウスに対して飲むと豚になる酒を勧めています。足元にいるのは既に豚になったオデュッセウスの部下。ストーリーを知らないと分からない怖さの典型かな。背景の鏡オデュッセウスが写っているという構図も面白い作品でした。解説はこのシーンについてのみを説明しているので、話全体を詳しく知りたい方はホメロスの「オデュッセイア」を読んでみると良いかも。
ちなみにウォーターハウスはラファエル前派に属する画家で、ラファエル前派はこうした神話や文学作品を主題にした作品をよく描いています。こうした各画家の指向性などについても知識があると一層楽しめるのではないかと思います。

こちらもオデュッセイアの話の続きで、ハーバート・ジェイムズ・ドレイパーの「オデュッセウスとセイレーン」
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歌を聞くと錯乱して海に飛び込むと先程のキルケーから教えて貰ったので、水夫たちは蜜蝋で耳栓をしていますが、オデュッセウスは歌を聞きたいので自ら柱に括り付けられていますw ここではセイレーンは人魚で表されていて官能的な雰囲気でした。

こちらはギュスターヴ=アドルフ・モッサによる「セイレーン」
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こっちのセイレーンは鳥みたいで見た目からして怖いw モッサの絵の女性はみんなこの狂気をはらんだ目をしてますw 背景が水没した都市みたいな感じなのもシュールな怖さを出していました。モッサは他の章にも1点あったかな。
 参考記事:ニース美術館 (南仏編 ニース)

こちらは旧約聖書の話から引用したフランソワ=グザヴィエ・ファーブル「スザンナと長老たち」
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好色な長老たちが美しい人妻スザンナの水浴を覗き見した上、セクハラ&パワハラで無理やり関係を迫り、断られたら逆ギレして姦通罪をでっち上げて裁判するというド畜生な話。聡明なダニエルによって2人別々に取り調べを受けることになり、見事な逆転裁判ぶりで長老たちは死刑になりましたw これもよく西洋絵画で主題になります。

ここには他にもオイディプスを主題にした作品、ヨハネの黙示録を主題にした作品、ルドンによるオルフェウスの死を描いた作品 などがありました。この辺はストーリー自体も面白いので、一度関連書籍を読んでみると良いかも。


<第2章 怪物・悪魔・地獄>
こちらはその名の通り悪魔や地獄を描いた作品のコーナー。特に夢魔を描いた作品が多かったかな。ここは比較的見た目で分かりやすい怖さの作品が多いと思いますが、聖アントニウスの誘惑 や ダンテの「神曲」を主題にしたものはストーリーを知っていないと理解は難しいと思います。この辺もよく観る主題(特に聖アントニウスの誘惑)なので、この機に調べてみると今後の絵画鑑賞に役立つと思います。

ここには今回の趣旨を抜きにしても素晴らしいアンリ・ファンタン=ラトゥールの作品が2点あったのが嬉しい。 他にもボス風の奇怪な地獄絵なんかも面白かったです。
 参考記事:ベルギー奇想の系譜 ボスからマグリット、ヤン・ファーブルまで (Bunkamura ザ・ミュージアム)


<第3章 異界と幻視>
ここは版画が多めのコーナーで、異界や幻視、妄想などを絵画化した創造性溢れる作品が並んでいます。ここも特に予備知識無しでも分かるかな。 ルドンやムンク、ゴヤ、ブレスダン、クリンガーなどこの手の画題を得意とした様々な時代の画家が名を連ねています。特に好きなのはクリンガーの手袋の話で、一部しか展示されていませんでしたが一連のストーリーが紹介されていました。ゴヤはもっと怖い作品が沢山あるのでこの趣旨ならエース級だと思うんだけどなあw
 参考記事:
  エドヴァルド・ムンク版画展 (国立西洋美術館)
  プラド美術館所蔵 ゴヤ 光と影 感想前編(国立西洋美術館) 
  プラド美術館所蔵 ゴヤ 光と影 感想後編(国立西洋美術館) 
  マックス・クリンガーの連作版画―尖筆による夢のシークエンス (国立西洋美術館)
  ルドンとその周辺-夢見る世紀末展 感想前編(三菱一号館美術館)
  ルドンとその周辺-夢見る世紀末展 感想後編(三菱一号館美術館)

ここで2階の展示は終わりで、1階に続きます。


<第4章 現実>
ここまではよく観る主題やよく観る作品が多かったので、並んだ割に普通だなという感じだったのですが、この章と最後の章は興味深い作品が多かったように思います。ここには非常に厳しい当時の現実がそのまま描かれた作品が並んでいて、ウィリアム・ホガースの「娼婦一代記」や「ビール街とジン横丁」は18世紀ロンドンの悲惨な事件や世相を凝縮したような絵でした。他にも切り裂きジャックに異常な関心を示して容疑者と考えられていたウォルター・リチャード・シッカートなども興味深い話です(肝心の絵はつまらないけどw) また、19世紀のイギリスは植民地への男性の出稼ぎが増えたこともあり、女性は結婚することもままならず、娼婦になって妊娠してしまい生活ができなくなって自殺というケースも多かったらしく、それを伝える絵などもありました。現実が一番怖い…。

こちらはポール・セザンヌの「殺人」
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タイトルそのものの絵ですが、静物や風景、人物などをよく描いて理論家だったセザンヌらしからぬ主題となっています。若い頃の試行錯誤の頃の作品だそうで、これは中々お目にかかれない作風で興味を引きました。


<第5章 崇高の風景>
こちらは風景と共に歴史や物語が描き込まれている作品のコーナー。聖書にあるソドムとゴモラの話のソドムを描いた作品や、ポンペイが火山で埋もれる時を想像で描いた作品、バビロンでの怪異を描いた作品など、やはりそれぞれのエピソードを知っていたほうが楽しめるものが多いです。
 参考記事:ポンペイ展 世界遺産古代ローマ文明の奇跡 感想前編(横浜美術館)

ここで面白かったのはジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナーの「ドルバダーン城」で、弟が兄を城に幽閉する話を下敷きに、幻想的なウェールズの光景を描いていました。一見すると神話的な美しさなのに、英国ならではのドロドロした権力争いが描かれているというのが怖いです。
ここにはギュスターヴ・モローが2点あったのも嬉しい。モローは怖さがあっても優美です。


<第6章 歴史>
最後は歴史に関するコーナーで、ここが一番の見どころと言えます。クレオパトラやマリー・アントワネットといった非業の死を遂げた人物を描いた作品や、海難事故のような悲劇を描いた作品もあります。そして、今回の目玉となるポール・ドラローシュの「レディ・ジェーン・グレイの処刑」は必見で、これを観ただけでも今回の展示を観て良かったと思えました。

こちらがポール・ドラローシュの「レディ・ジェーン・グレイの処刑」 実物は予想以上に大きくて迫力があります。
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純白のドレスの光沢など細部まで緻密な描写も見事ですが、やはりこのドラマティックな場面自体に興味を引かれます。ジェーン・グレイは16歳でイングランド女王になりましたが、僅か9日でメアリー1世(通称:ブラッディメアリー)によって反逆罪で処刑された人物です。絶望している侍女や斧と短剣を携えた処刑人など緊張感溢れる中、目隠しをされたこの場にそぐわない若々しい女性が悲劇を際立たせます。実際にはロンドン塔の外で黒い服を着て処刑されたらしいので創作が混じっていますが、生々しさと同情を禁じ得ない美しさが同居していました。

こちらはフレデリック・グッドールの「チャールズ1世の幸福だった日々」
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観た感じ幸せそのものですが、過去形のタイトルで察してしまかな。この絵は後世に想像で描かれたもので、チャールズ1世は清教徒革命に翻弄され斬首となった人物です。子供の成長具合から、それはこの絵の直後にやってくる出来事なのだとか…。


ということで、思ったよりも定番の主題とよく観る作品が大半だったように思いますが、現実と歴史のコーナーは中々に陰惨と狂気がありました。やはり想像の怪物や悪魔などより一番怖いのは人間の業といった所でしょうか。 中野京子 氏が言うように絵画は感性で分かるのはごく一部であり、歴史や文化が凝縮されたものなので、それを知ると一層楽しめると思います。 これだけ盛り上がっている展示なのでここから美術や歴史に興味を持つ人が増えることを期待したいところです。 既に混雑していますが、会期末は混雑が予想されますので、気になる方はお早めにどうぞ。


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評価




ウィンザーチェア -日本人が愛した英国の椅子 【日本民藝館】

2週間ほど前の土曜日に駒場の日本民藝館で「ウィンザーチェア -日本人が愛した英国の椅子」を観てきました。

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【展覧名】
 ウィンザーチェア -日本人が愛した英国の椅子 

【公式サイト】
 http://www.mingeikan.or.jp/events/special/201709.html

【会場】日本民藝館
【最寄】駒場東大前駅

【会期】2017年9月7日(木)~11月23日(木・祝)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間20分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、この展示は18世紀前半にイギリスで生まれた「ウインザーチェア」に関する展示です。ウインザーチェアが出来た当時は王侯貴族の椅子だったようですが、やがて庶民に使われるようになり一般の家庭用などに多彩なデザインで作られたようです。全て木で作られていて一枚板の座板とそれを支える脚と背もたれが直接接合されている点が共通の特徴で、柱状の骨組みで出来た背もたれが多いかな。円形の背もたれや四角い背もたれ、4本脚や3本脚など一口にウインザーチェアといっても様々な種類が展示されています。詳しい解説などもないので20分もあれば観られると思いますが、会場内には数多くの椅子が並んでいて素朴ながらも優美なデザインを比べて見ることが出来ました。 民藝運動の本拠地とも言えるこの地で開催するだけあって、手作り感のある木工技術を堪能できます。 座ることができないのはちょっと残念だったかな。

ということで、ちょっと短い感想ですが他の常設の民芸品と共に味わい深い展示となっていました。特別展以外も併設で「欧米の多様な椅子―17~18世紀の椅子を中心に」や「欧米の多様な椅子―19~20世紀の椅子を中心に」「英国の多様な椅子とスリップウェア ―17~18世紀の椅子を中心に」といった感じで類似の木製の椅子の展示もありました。椅子好きには楽しい展示だと思います。
 参考リンク:併設展の紹介サイト

おまけ:
いつも通り日本民藝館の後は旧前田侯爵邸にも行こうと思ったら洋館が改装中でした(和館はやってます) 2018年9月まで工事の予定のようです。
 参考記事:
  旧前田侯爵邸の写真 (2013年6月 洋館編) 
  旧前田侯爵邸の写真 (2013年6月 和館編) 


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評価




井の頭公園100年写真展+いきもの写真展 【三鷹コラル】

前回ご紹介した三鷹市美術ギャラリーの展示を観た後、同じ建物の1つ下の階でたまたま「井の頭公園100年写真展+いきもの写真展」という展示をやっていたので観てきました。既に終了している展示ですが、中々興味深かったのでご紹介しておこうと思います。

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【展覧名】
 井の頭公園100年写真展+いきもの写真展 

【公式サイト】
 http://mitaka-musashino.mypl.net/event/00000270495/ 

【会場】三鷹コラル4階
【最寄】三鷹駅

【会期】2017/9/15(金)~10/6(金
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間20分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_①_2_3_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
この展示は三鷹市美術ギャラリーのあるデパートの廊下で開催されていた写真展で、「井の頭公園100年写真集」と「井の頭公園いきもの図鑑」の出版を記念して井の頭公園の100年の歴史と現在の生態系を紹介する内容となっていました。点数は少なく写真をコピーしたパネルでの展示なので、作品充実度は1点にしましたが、解説がついていて分かりやすく面白かったです。いくつか撮影してきたのでそれを使ってご紹介しようと思います。
 参考記事:井の頭恩賜公園の写真 

井の頭公園の公園としての歴史は100年ですが、旧石器時代の遺跡が発見されるなど相当昔からこの辺に人が住んでいたようです。江戸時代には神田上水の水源として信仰や観光の対象となっていたようで、明治の終わり頃に公園設立の構想が立ち上がり、大正時代に渋沢栄一を中心とした東京市の関係者らの尽力で1917年5月1日に日本で初めての郊外公園「井の頭恩賜公園」として誕生しました。

まずこちらは開園直後の井の頭公園。
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開園直後は遠足地として人気だったそうですが、玉川上水に落ちて溺れた生徒を助けようとした教諭が亡くなるという事故もあったそうです。当時は全国的に取り上げられて慰霊碑も作られたのだとか。今と比べるとかなり自然そのものって感じです。

こちらは池をプールとして使っている様子。
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1921年に来場者増加を図るために天然のプールとしてオープンしたそうです。91mもあったそうですが 大らか過ぎて割と衝撃w その後1933年にコンクリ製の2代目プールもオープンしますが、水がメチャクチャ冷たいので有名だったのだとかw(2代目も1983年に廃止。今は日本庭園になってます)

今でも残っている橋(七井橋)は1922年に出来ました。
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沢山の人で賑わっているのは今も昔も同じかなw

1924年には弁財天が焼失するという災難があったようです。
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元々は源頼朝がお堂を立てたのが新田義貞との合戦で焼失し、江戸時代に徳川家光によって再建されたものだったようです。更に燃えたので現存は3代目かな??

1929年にはボート場や新設プールなども開設されました。ちなみに1939年には何とモーターボートも走っていたようです。この写真はかなり貴重なものらしいのであえて出し惜しみしておきます…。あの小さい池にしっかりモーターボートが浮いているのが中々シュールですw

こちらは1939~1943年頃にあった茶屋。風情があって残っていて欲しかった。
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これも今では伝説的な存在となっていたのがこの写真で確認できたそうですw 投下されてた爆弾(不発弾)を避ける為、橋のたもとに移転されたそうです。

1934年には「井の頭恩賜公園動物園」がオープンします。当時は上野動物園に次ぐ規模だったらしく開園日には2万人も来たのだとか。元々の構想では檻や柵の無い「無柵放養式動物園」を採用し動物の種類も上野を凌ぐものになる予定だったそうで、2年後には水生物館もオープンしました。(さらに植物園も構想があったようです。)

こちらは1942年の頃の動物園。日米開戦の翌年です。
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建材自体も不足して予算も1/10に減るなどかなり苦境だったようです。しかし、それ以上の悲劇がこの後に起きます…。

こちらは終戦前年の1944年の写真。
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明治時代に植えられた杉並木の景観で有名だったそうですが、木材供出の対象となり15000本が伐採されました。また、空襲時に危険な存在となるホッキョクグマなどは毒殺されています…。(井の頭公園の北西2km先に軍用機のエンジン工場があったそうで、井の頭公園周辺は真っ先に空襲のターゲットになったようです。)

この辺は戦争が井の頭公園にまで暗い影を落としていたのがよく分かる写真です。しかし1945年に戦争が終わり平和が訪れると再び活気が戻ってきます。来場者は1946年には22万人まで回復し、1950年に40万人、1955年には69万人とどんどん増えていきました。

1954年には象の はな子 が井の頭公園にやってきました。
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象を見たいという子どもたちの熱意がインドとタイに伝わり贈られたそうで、熱狂的に迎えられ全国に移動動物園として開催されました。その後、井の頭公園への定着の要望に答えて はな子がやってきたようです。2016年5月に62歳で亡くなった際は大きなニュースになっていました。
ちなみにこの頃の象への熱狂ぶりは川端龍子の「百子図」にも描かれています。
 参考記事:Kawaii(かわいい) 日本美術 -若冲・栖鳳・松園から熊谷守一まで- (山種美術館)

その後、ミスコンや花火大会が行われるなどさらに賑わいを見せるようになり、現在の大人気ぶりにつながっていきます。

続いては井の頭公園の生態系の写真でした。つい最近に水を抜いて掻い掘りしたこともあって一時は水が澄んだのですが、既にアメリカザリガニやブルーギルなどの外来種が現れているようです。

こちらはゴイサギ。
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平家物語で醍醐天皇から正五位の位階を賜ったのが名前の由来なのだとか。非常に美しい姿をしているので醍醐天皇もそれが気に入ったのかな。

こちらはカイツブリ。
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何に乗っかってるんだろ?と思ったら、これは落ち葉や水草で作った浮き巣なのだとか。面白い生態です。


ということで、たまたま開催されていたので観ただけだったのですが、井の頭公園の意外な歴史や生態系を知ることができて面白かったです。もう終わってしまいましたが、幸いなことに本で見ることも出来るようなので、井の頭公園が好きな方は本でチェックしてみるのも良いかもしれません。

参考リンク:amazonの書籍紹介ページ(画像からリンクしていて、紹介ページでも数点の写真が観られます。レビューも高評価のようです)
 


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評価




届かない場所 高松明日香展 【三鷹市美術ギャラリー】

前回ご紹介した八王子の展示を観た後、中央線で三鷹まで移動して三鷹市美術ギャラリーで「届かない場所 高松明日香展」を観てきました。

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【展覧名】
 届かない場所 高松明日香展

【公式サイト】
 http://mitaka-sportsandculture.or.jp/gallery/event/170811/
 http://takamatsuasuka.blogspot.jp/

【会場】三鷹市美術ギャラリー
【最寄】三鷹駅

【会期】2017年8月11日(金・祝)~10月22日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
結構お客さんはいましたが、快適に鑑賞することができました。

さて、今回の展示は1984年生まれの若い女性画家 高松明日香 氏による個展です。以前この方の作品をどこかで観て(多分アートフェア2017?)気になっていたのですが、NHKの日曜日美術館の後のアートシーンでこの展示を紹介してるのを観て思い出し、足を運んでみました。

高松氏は高松市の生まれで、高校時代から美術コースに進み大学は尾道市立大学芸術文学部デザインコースで学んだそうです。2007年に卒業し2009年には丸亀市で個展、2010年には東京で個展を開いていたようで、早い段階から注目されていたようです。その後も個展や海外での制作などを経て、今年も上野の森美術館のVOCA展に参加するなど活発に活動されています。
展覧会は特に章立てが無かったので、簡単に説明すると私の考える高松氏の特徴は以下のようになります。
 ・基本的に具象でややデフォルメした感じ。木、鹿などの動物、水辺、後ろ向きや手だけなど顔が出てこない人物像 あたりがよく描かれています。
 ・大きさの異なる5~8点程度の絵を独特の配置で並べ、1つのタイトルをつけている
 ・1つのタイトル内の作品はそれぞれ関連性があるような無いようなモチーフで、相関性やストーリーを想像させる
 ・それぞれの絵は青やグレーを基調とした柔らかく落ち着いた色彩で、静謐な印象を受ける
 ・インターネットや映画で観たイメージを描いているそうで、現代的な感性が見受けられる。
という感じです。作品リストではタイトル数は27点ですが、絵自体は160枚程度あるそうです。

まず、絵そのものが面白くてこれだけでも十分楽しめるのですが、いくつかの絵を組み合わせているのでストーリーを考えながら見る楽しみがありました。多面的かつ時間の経過などを感じられるので、この手法は大いなる発見かも?? 説明が無く意味深なタイトルなので難解に感じるかもしれませんが、絵自体は分かりやすい個性があるので多くの人が好きになれそうな感じです。(公式サイトにも画像が結構載っているので、ご参照ください)

ということで、予想以上に面白い展覧会でした。連れも大いに気に入って図録を買って応援しないといけない!と言って図録も買いましたw 今後ますます活躍が期待できると思いますので、陰ながら応援していきたいアーティストです。 会期末が迫っていますので気になる方はお早めにどうぞ。

おまけ:
この展示では人気投票をやっていて、自分の気に入った作品に投票することができます。私が行った時点での一番人気は南極の氷を描いた作品のようでした。
DSC08557.jpg
私は「かっさらい」という作品に投じておきました。


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